DRESSEDUNDRESSED(ドレスドアンドレスド)は、北澤武志がデザインを手がけるユニセックスブランド。相反する様々な要素を融合し構成したモダンでミニマルなテーラリングとストリートのユーモアを巧みにミックスした脱構築的なコレクションを展開
2020A/W コレクション特別インタビュー
2020年3月16日、DRESSEDUNDRESSEDの2020A/Wコレクションが無観客のランウェイショーで行われた。発表に向けてチーム一丸となり準備を重ねてきたというデザイナー北澤武志氏に、制作の舞台裏やコレクションに込めた思いを聞いた。
─── 今回は新型コロナウィルスの影響から、直前で無観客ショーに切り替えることとなりましたが、どういった思いを持たれましたか?
まずはじめに、この度は新型コロナウィルス感染症の影響に鑑(かんが)みるなか、DRESSEDUNDRESSED AUTUMN WINTER 2020-2021 をご紹介して頂ける感謝とともに、一刻も早く平穏な日常が戻り、ファッションを心から楽しめる未来を信じるばかりです。
弊社DRESSEDUNDRESSEDは3月16日にAUTUMN WINTER 2020-2021SHOWを無観客にて発表させていただきました。思い返すともう1カ月以上前になりますね。3月2日に日本ファッション・ウィーク推進機構Rakutenより Fashion Week TOKYO 2020A/W中止の決定がありましたが、この決断に至るまでも多くの葛藤があったかと思います。このような不安に包まれる中でも、最善を尽くしていただいた関係者の皆様には大変感謝しております。
─── 2020AWコレクションのテーマやショーの見どころについて教えてください。
DRESSEDUNDRESSED Autumn-Winter 2020-2021コレクションタイトルは“I Can't Remember You” 記憶と忘却の間にある曖昧な感覚にチャレンジをしました。努力しても細部を思い出せなくなってしまった。思い出すのはシルエットや根本的な部分だけ。悪いことじゃない。記憶とはそういうものなのかもしれません。
無観客で開催されたショーのスタートは、透明のマスクをした男がカーテンを開くシーンから始まります。カーテンを開くと上階へと続く階段が現れ、スポットライトに照らされたモデルたちが階段を下り、キャットウォークを歩き、ふたたび上階へ消えていきます。全26 LOOKSの前半13 LOOKSはプレーン、後半13 LOOKSは同モデルが前半と同シルエットですがホワイトアウトされた服で構成しています。根本的なシルエットは同じですが、DRESSEDUNDRESSEDの巧妙な仕立てによって、細部のディティールが異なっています。
例えばポケットチーフがネームプレートやリボンバーへ、ボタンがバッジへ、アウターにはハンドステッチが追加で施されています。更にすべてのモデルの身体や衣服に、ライブで白い粉を乱雑に散りばめました。ホワイトアウトされたアイテムは、アーカイブテキスタイルからパターンを積み重ね、時間経過をイメージし、新たに再作成されたテキスタイルです。
音楽は環境音楽、ハードロック、クラシックが織り交ぜられたサウンドトラックによって構成されており、情緒不安定な夢の世界のようなシュールレアリスム的な雰囲気を演出しました。ショーの最後は透明のマスクをした男がカーテンを閉じ、ショーを締めくくります。SEENOWTOKYOではすべてのルックがアップされているので“まちがいさがし”をするように楽しんでもらえると嬉しいです。
─── 今回のショーはどうやって作り上げたのでしょうか?
ひとつのコレクションは約6カ月前から始動します。今回のコレクションはチームの一元化を測り、チームの指揮系統をひとつに絞りました。結果、チームひとりひとりの役割が明確化され、より強固なチームワークが生まれました。無観客でのショー、キャットウォークを発表することはブランドとしてもはじめての試みだったのですが、このチームであったからこそ発表できたと、チームには大変感謝しています。
前質問でお話ししたように、コレクション後半のLOOKSは雪が降り積もったようにホワイトアウトされた服で構成されています。ショー前々日のフィッティング最終日、最後のモデルのスタイリングが決定したタイミングに東京ではめずらしく雪が降っていました。それは映画のワンシーンのようでした。私は青森で生まれ、幼少期を過ごしました。毎年、雪によって町が閉鎖され、雪が溶け、春になるのを心待ちにしていました。解けない雪はありません。私自身にとって忘れられないコレクションになったと思います。
─── 今、新作の2020A/Wコレクションを通して伝えたいことは?
私の好きな言葉で、車椅子の物理学者ホーキング博士が残した「人生は、できることに集中することであり、できないことを悔やむことではない。どんなに人生が難しく感じられたとしても、必ず自分に出来ること、そして成功できることがあります」。新型コロナウィルス感染症で世界が不安に包まれる中、いつも皆様から勇気をいただいているように、私達もまたコレクションを通して少しでも希望を持っていただけたらいいなと思います。困難な時期ではございますが、みんなで助け合い乗り越えていきたいです。
北澤 武志 Takeshi Kitazawa
2009 DRESSEDUNDRESSEDを設立。
2012 Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOにてコレクションデビュー。
2013 London Fashion Week 会期中に開催されたインターナショナル・ウールマーク・プライズのファイナリスト、 世界の6ブランドの1つに選出され、カプセルコレクションを発表。DRESSEDUNDRESSED は VOGUE Italia 編集長 Franca SOZZANI 推薦によるスペシャルエントリーによるもの。インターナショナル・ウールマーク・プライズは1953年に創設、当時無名だったイヴサンローランとカールラガーフェルドを発掘したコンテストをよみがえらせるもの。第5回 DHLデザインアワードを受賞。Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 14 S/Sに参加する36ブランドの中から選出。
1982年生まれ。青森県出身。都内セレクトショップのオープニングディレクター兼バイヤーを経て、2009年にDRESSEDUNDRESSEDを立ち上げる。2012年 Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOでコレクションデビュー。2013年度 第5回 DHLデザインアワードを受賞。
クラシックとモダン、繊細さと大胆さ、マスキュリンとフェミニン、相反する様々な要素をアッセンブルし ミニマルなテーラリングとストリートのユーモアを巧みに融合させた脱構築的なジェンダーレスコレクションを展開。