nuterm(ニューターム)は福原雅人が2017年にスタートしたメンズファッションブランド。メンズウェアの成り立ちやルールを踏襲しながらも、レディースで用いられる立体裁断の技術を用い、着こなしのルールや世代観にとらわれない新しいスタイルを提案している。
新たなタームで挑む既存のルールの「再定義」
ーブランド設立までのご経歴を教えてください
文化服装学院のアパレル技術科を卒業して、イッセイミヤケやコムデギャルソンでパタンナーを務めたのちに独立して、フリーランスでデザイナーやパタンナーをやっていました。2010SSからは「BLACK&BLUE(ブラックアンドブルー)」というブランドをスタートし、並行して2017AWに「nuterm」をスタートしました。
ー新しくnutermをスタートしたきっかけや理由はなんですか?
テーマに沿ったものづくりをやりたいと思ったからです。企業にいる間は、テーマがあってそれに沿ったものづくりをしたのですがその時はなんとなくそれが嫌で、その反動もあり独立後立ち上げたブランド「BLACK&BLUE」ではテーマを設けず、その時自分がいいと思ったもの、着たいと思ったものを作るようにしていました。しばらくそうしたスタイルでもの作りをしていましたが、企業でデザインをしていた頃のテーマに沿った物作りの方法で生まれる、未知の領域に取り組み、自分に課題を課していくような過程が、なんとなく良いなと感じられるようになってきたんです。
画像出典:nuterm.jp
ーnutermというブランド名の由来を教えてください。
ブランド名のnutermは、”new term”=「新学期」という意味で、今までの「BLACK&BLUE」とは違うこと、新しいことを始めるという思い、そしてブランドとしても毎シーズンごとにnew termでありたいという思いを込めました。
ーテーマは毎シーズンどのように決めているのですか
他の多くのブランドもそうだとは思うのですが、最初からこれ!というテーマがあるわけではなく、始めはなんとなく気になっていることや、こういうことをやりたいというものを候補にあげ、その中から絞り込んでいくようなやり方をとっています。
ー自分が作りたいものを率直に表現することと、テーマを事前に決めてから制作するのでは作り方に違いはありますか?
「BLACK&BLUE」の方は、普段着る服をイメージしていたので作りたくないものは作らなくていい、と思ってスタートしていたので、デイリーな、自分のクローゼット的な考え方で作っていました。一方「nuterm」の方は、テーマという課題があって、それにチャレンジすることで、普段であれば今まで取り上げる事のなかったアイテムやディテールを取り入れながら制作しています。
また「BLACK&BLUE」だと洋服単品が成立しないといけなかったのですが、「nuterm」ではルックを意識した作り方になりました。例えば"add - less"というテーマで制作したファーストコレクションにある色々なアイテムに取り付けられる「フードのみ」というアイテムなどは、テーマがないとそもそも生まれないものかなと思っています。
ーでは2019SSコレクションのテーマを教えてください。
2019SSのテーマは”Redefinition=再定義”です。世の中の一般常識になっているものを色々見ていくと、自分が今まで教わってきたものやルールって必ずしも世界共通じゃないのでは?という疑問が生まれ、一度再定義してみようということを考えました。例えば、今回先行受注も行う、ボタンダウンシャツを再定義するのにあたって、前立ての幅やボタンの位置は、本当にこの見慣れたもので良いのか?という疑問から始まり、通常3~3.5cmの前立ての幅を5cmにしてみたり、通常真ん中にある袖口のボタンの位置を変えてみたり…。当たり前のものを当たり前に作ることを否定はしませんし、自分自身作っているものもあるのですが、ちょっとひねくれた考え方をしてみると面白いものが生まれたりします。
ー最後に今後のブランド展開や、ご自身の将来像を教えてください。
まだ4シーズン目で始めたばかりなので、もう少し自分なりの追求はしていきたいです。特に今まで得た、縫製や生地などの専門的な知識をより深めたいですし、それを使ったアドバンテージのようなものも表現していきたいなと思っています。
Text : Yuya Uchida, Kaede Sato
福原 雅人 Masahito Fukuhara
文化服装学院アパレル技術科卒業後、イッセイミヤケ、コムデギャルソンでパタンナーを経験したのちにフリーランスに転身。2010SSより「BLACK&BLUE」スタートさせ、2017AWに新ブランド「nuterm」を立ち上げる。
メンズウェアの成り立ちやルールを踏襲しながらも、レディースで用いられる立体裁断の技術を用い、着こなしのルールや世代観にとらわれない新しいスタイルを提案。