LAMARCKは森下慎介がデザインを務めるウィメンズブランド。「前進的進化」をキーワードに新しい自分を発見できる衣服の提案を目的とする
四次元から辿る自身のルーツ
2018春夏コレクションのテーマは「Spazialismo(空間主義)」。 今回、デザイナーの森下慎介氏が空間主義(=四次元の空間)と捉えたのは“自身のルーツ”。 祖父が見た原風景や、過去と現在をつなぐ時間軸を繊細なディテールで表現している。 シルエットは鮮烈なニュールックをエッセンスにしつつも、森下氏らしいモダンな作品群に。 ストーリー性が高いコレクションと評されるLAMARCKの今回の見どころについて話を聞いた。
ーブランドネーム「LAMARCK」についてお伺いできますか?
「ダーウィンの進化論の基礎「前進的進化」を発表したフランスの博物学者ジャン=バティスト・ラマルクに由来しています。 人や生物が生きる上で経験したことが、後世に引き継がれるという彼の考えに共感し、そんな服を作りたいと「LAMARCK」にしました」
ー「LAMARCK」が求める大人の女性像とは?
「スタイルはインパクトを求めるより、さりげなくディテールが凝っているアイテムを好む人。 アートに造詣が深い独特の感性を持っていたり、自立したモダンな女性でしょうか」
ー2018SSのコンセプトやデザインについて教えてください
「今回のコンセプト『スパッティアリズム』は、イタリアの画家ルーチョ・フォンタナが提唱した「空間主義」から着想しています。従来の芸術を打ち破るために、絵や彫刻の境界を取り払った四次元の空間を作ろうとした芸術運動です。 4次元=4つ目の時間。4つ目の時間は自分のルーツを大事に表現したいと思い、祖父のルーツである長崎と兵庫の文化を取り入れました。長崎の風車や波佐見焼き、竹田城の麓(ふもと)で暮らしていたこと。それらを表現する鳥や花、海や空のアースカラーなど自然のモチーフを取り入れました。現在と過去をつなぐ時間の流れを“線”で表現してストライプやコード刺繍などを使っています。 ディテールはフォンタナが生きた40~50年のニュールックや特徴的なポケット使い、あとはアロハシャツやボーリングシャツなどもミックス。羽がついた布地を作ったり、コード刺繍で鳥を表現したり、面白いフラップ使い、譲っていただいたアンティーク(デットストック)の国産レースも使っています。 また、コレクションは「研究発表」と位置付けているので、今回ならコンセプトの空間主義=新しい空間に合わせて、ファッションショーと展覧会を同時に行う“新しい空間”に挑みました」
ーテーマやモチーフが複雑なストーリーになっているんですね
「テーマに関しては、毎回わざと難しいことを言っている節があるんですけど(笑)、 それは、コレクションの作り方が、まずテーマありきではなく、自分の琴線に触れる様々な事柄から樹形図のように発想を広げているので、 羽モチーフなら、布で表現するのか、刺繍で表現するかなど、いろんな展開を考えます。 それを包括するようなテーマを考えると、結果的に難しくなってしまうんです」
ー自身のコレクションを客観視すると?
「コレクションの作り方もそうなんですけど、ストレート過ぎる表現にはあまり興味がなくて。 見た目だけで選んでもらえるのはもちろん嬉しいですが、服の背景にあるストーリーを感じられる服を提供したいし、 それがブランド価値になるのかなと思っています。洋服が溢れる今だからこそ、ストーリーに惹かれて服を手に取る体験を提供できたらいいなと思います」
ー今後の展望やメッセージを改めて頂けますか
「海外でコレクション発表ができたらいいなとは考えています。国の文化として根付いているパリコレクションは、 歴史的建造物でショーをしていますが、そういう場所って必然的に収容人数も少ない。 そんな限られた空間で純度の高い発表を行いながらも、世界でしっかりとブランドのストーリーを伝え、評判や口コミでブランドネームが広がっていけばいいですね。 今季についてもコレクションで一つのストーリーを構成しているので、服が持つストーリーをぜひ全体を通して感じてください」
森下 慎介(Shinsuke Morishita)
大学卒業後、文化服装学院を経て、 文化ファッション大学院大学に入学
在学中にはパリで開催されたフランス婦人プレタポルテ連盟主催『プレタポルテ・パリ』にてランウェイショーを行う。
2011年卒業と同時にブランドを立ち上げ、
2012SSよりコレクションデビュー。
LAMARCKは森下慎介がデザインを務めるウィメンズブランド。「前進的進化」をキーワードに新しい自分を発見できる衣服の提案を目的とする