KEISUKEYOSHIDA(ケイスケヨシダ)は吉田圭佑がデザインを手がけるユニセックスブランド。明るいのか暗いのかわからない青春の空気と、そこにいる彼らの装いをコンセプトとする。
若さの感情を携えて目指すエレガンス
東京カルチャーとモードが融合し、常に未来の装いを意識したアイテムたちは、奇抜でありながらも袖を通すとしっくりと馴染む。 そのリアル感に多くの若者が共感する「KEISUKEYOSHIDA」。ブランド立ち上げから約3年ながら、早くも熱狂を生み出すデザイナー吉田圭佑氏に話を聞いた。
ーそれでは2018AWのテーマからおうかがいできますか?
明確なテーマはないのですが、「大人」「エレガンス」というフレーズを意識しました。今まで若さの感情をモードで表現してきましたが、今回は人としての成熟、枯渇、大人にならなきっていう空虚感、個人的なモヤモヤ、心のまどろみやもつれなど、それらを抽象的な概念のまま、エレガンスで表現できないかなと作ったコレクションです。ブランドテーマの一つに「もがくこと」があるのですが、「KEISUKEYOSHIDAが、なれるかわからない大人のエレガントに向き合う」それ自体がテーマになっている気がします。
ーエレガントをデザインにどう反映しましたか?
王道のエレガンスに向き合う過程で、大人になる空虚な感情がどう王道に向かっていくか、その過程自体をデザインしました。2018SSはヒッピー、2017AWは60年代のピエールカルダンのような未来感など、今までの各コレクションは始めからイメージがありましたが、今回は特にそういうものは設けずに、まどろみやもやつきをそのままデザインに落とし込みたかったんです。布地が体を覆うように巻き付いていたり、長いフードが首に巻き付いてできるシェイプ、前合わせが段違いになって絡み合っているような見せ方など、抽象的なままデザインしています。ラインナップは明るい色が多いのですが、個人的にはここ最近では一番暗く、ダウナーなテーマで作りましたね。
ー2018AWは一見、「本当にKEISUKE YOSHIDAのコレクション?」と思われがちですが、一点一点のアイテムを見ると“らしさ”を感じるから不思議ですね
自分らしさって毎回あんまり意識していないんですが、分かりやすく“らしさ”をが出る「カジュアル」「制服」ってキーワードを今回は意識的に抑えました。ブランドの核の部分とも言える「もがくこと」が表現できたらいいな、と思って製作したので、KEISUKE YOSHIDAらしいと言ってもらえるとすごく有り難いですね(笑)
ー注目のデザインやアイテムについて教えてください
いつも以上にディテールやシルエットをデザインコンシャスにした一方で、素材や色はシンプルで限られたものしか使っていないのが多いですね。うちの人気アイテムであり、カジュアルな印象の強いパーカーも、今回のテーマに沿っていつもと違った見せ方にできたんじゃないかと思います。素材選びにもチャレンジして、例えばトレンチコートも、一つはベーシックなカーキのコットン素材を用いてデザインで見せる一方で、同じアイテムでも素材の部分でチャレンジしていたり。素材感はぜひ注目して欲しいところですね。
ー以前のお話では「素材のチャレンジはまだ先」とのことでしたが、何か心境の変化でも?
そうなんです。素材選びからデザインを考えることで、形はベーシックでも面白いアイテムができて幅が広がりましたね。シルクやサテンをベースに、似ている質感ながらスポーティだったりフューチャリスティック感のあるナイロンを使っていたり。シルクっぽい発色のいい色味と、ナイロンのフューチャリスティックな色味、そこに入るアイロンプリントのラフさのミックス感もぜひ見て欲しいです。今回のコレクションで素材にチャレンジすることの大事さを感じましたね。
ーパッと目につくモチーフに果物や野菜、油彩の絵画プリントが用いられていますね
ファッションのアプローチで大切なことは新鮮であることだと思っていて。 ちょっと熟れた果物の絵をモチーフにしているんですけど、大人になる=成熟していくことで、新鮮とは真逆なことじゃないですか。だからこそ、モチーフで鮮度を感じられるものを作りたいなと思って。モチーフはどれも妙にシリアスなタッチで描きながら、プリントでさらっと貼られている軽さもいいなと思っています(笑)。
ー最後に読者の方に一言お願いします。
今期は宮下公園で初めて外国人モデルを起用した2017SSのショーと同じくらい舵を切ったコレクションだと感じていています。いつも見て下さっている方にどう響くか正直不安だし。でもそこを汲み取ってもらえると嬉しいですね。コレクションで違和感を感じでも、@SeeNowTokyoでアイテムの詳細を見たり、実際に手に取ってディテールを確認してもらえれば、KEISUKEYOSHIDAらしさを実感してもらえると思います。3シーズンに1回くらいのスパンで大きな転換期があるのですが、今回はそのコレクションなのかなと。ぜひ皆さんにもその変化を楽しんでもらいたいですね。
Text: Naoco Okada Photo: Koki Inoue
1991年東京都生まれ。立教大学文学部卒業
ここのがっこう、ESMOD JAPON「AMI」にてファッションを学ぶ。
15A/WよりKEISUKEYOSHIDAとして活動を開始。
「東京ニューエイジ(若手デザイナー集団)」に参加し、ランウェイ形式でコレクションを発表。
16S/SよりMercedes-Bens Fashion Week TOKYOに参加。
KEISUKEYOSHIDA(ケイスケヨシダ)は吉田圭佑がデザインを手がけるユニセックスブランド。
明るいのか暗いのかわからない青春の空気と、そこにいる彼らの装いをコンセプトとし、15秋冬よりスタート。
思春期特有のイノセントに対する深い洞察と、デザイナー自身のコンプレックスを源泉として、ファッションの世界に新たな価値を打ち出した。2018秋冬には「大人になっていくことのなかにある空虚感」を描き、それまでのアイコン的「制服」モチーフは取り入れずにエレガンス志向なコレクションを発表。
1年ぶりとなるランウェイ形式での発表を行った2019秋冬には、"ずっとかっこいいと思うもの"と"今自分が作りたいもの"を溶け込ませたコレクションを発表。自身が通ったキリスト教系の小学校時代の礼拝堂で過ごした時間を背景とし、赤い照明の演出や包帯のモチーフ、ギプスをイメージしたブーツなどホラーを彷彿とさせるコレクションを披露した。