ー2009年のブランド設立に至った経緯を教えてください
まず2006年にセレクトショップ「CANDY」を佐藤(絵美子氏)らと立ち上げ、ディレクター兼バイヤーを経験しました。まだ世に知られていない若手ブランドの発掘に力を注いでいました。当時のCANDYは、ゲイカルチャーの街でもある新宿二丁目に店を構え、ジェンダーレスな洋服を作るきっかけにもなりました。男性でも女性でも着られる服は、2009年のブランド設立当初からすごく意識しています。
DRESSEDUNDRESSEDの特徴は、同じ服でも身長や性別、着合わせによって様々な表情が楽しめること。自由に着てもらうことによって、服は様々な表情を持ちます。その為、僕たちから洋服の着かたは押し付けたくはありません。
ーバイヤー時代は今のデザインに影響していますか?
バイヤーを経験させていただいたおかげで、クリエーションだけでは満足できないデザイナーになれているのかもしれません。より多くの人に新しい世界やデザインを見せたいです。お客様やバイヤー様、様々な立場の気持ちを汲んだクリエーションができるように心がけています。お客様の層はこちらが決めることなく、年齢層はもちろん、コンサバティブからエッジの効いたお客様まで、幅広い層に提供したいと思えるのは、バイヤー経験のおかげなのかもしれません。その為、シルエットやディテール、素材感にこだわった洋服と分かる質の良いものを提供したいです。
ーデザインだけに留まらず、ブランドを俯瞰できるきっかけになったんですね
バイヤー時代はとにかく「個性的なもの」「アーティスティックなもの」に目が行きがちな時期があったのですが、ある時、有名な音楽家のこんな言葉に触れて。「人と違うことは誰にでも出来る、でもみんなに影響を与えられるものを作るのはすごく難しいんだ」。そのときハッとしたんですよね。僕はお客様を喜ばせることより、自分の個性を押し付けてはいないだろうかって。デザイナーになりもうすぐ10年が経ちますが、今は少しずつ自分の個性と、お客様に喜んでもらえるデザインのバランスが良くなってきたんじゃないかなと思えます。
生地や縫製に関しても、僕がやれることなんてほんの一部。スタッフに助けてもらって作り上げています。デザイナーは単純にデザインだけをするだけではなく、僕がするべきことは、お客様やスタッフなど関わってくださる人たちを幸せにすることだと思っています。…なんだか話が大きくなってしまいましたね(笑)。
ーとってもいいお話です(笑)。 それでは2018AWのテーマについて教えてください
テーマは「I’m sexy」です。いわゆる表面的なセクシーさではなく、人には言えない秘密の恋のような、大人の隠し事が醸し出すセクシーさを表現したコレクションです。パーカーやカットソーにI’m sexyのテキスト刺繍があったりするのですが、セクシーな人は自分からI’m sexyとは言わないと思うので、そこがユーモアにもなっています。
ー秘密めいた恋をテーマにしたきっかけは?
前回の東京コレクションで発表した2018SSにも関係しています。12回目のコレクションだったのですが、DRESSEDUNDRESSEDがどう在るべきか、原点に立ち返ったんです。DRESSEDは“服を着る”、UNDRESSEDは“服を脱ぐ”という意味で、それを表現した裸のように見えるルックや、一方レイヤーにレイヤーを重ねたルックで二元性を打ち出しました。そして2018AWも原点回帰として、ずっと大切にしてきたユニセックスをしっかりと打ち出し、自分達らしさを見つめ直したコレクションになりました。男性の色気や、女性の色気をユーモラスに表現して、自分達の新たな側面を出せたらと思います。
ー今期を象徴するアイテムについて教えてください
今回はバックスタイルがキーとなるアイテムです。バックパネルシャツなどが象徴的なアイテムとなります。バックパネルシャツは、背中が取り外せるパネル状になっていて、ボタンを外したり、中のインナーを見せたり、組み合わせはお客様主体で楽しんでもらえます。無地とストライプがあるので、パネルを友達とシェアするのも楽しみ方の一つです。
また、DRESSEDUNDRESSEDの象徴的なこれまでのコレクションからのリエディションとなる4つ袖のアイテムやレイヤードのアイテム。DRESSEDUNDRESSEDのアイテムは、スタイリングによって様々な表情が楽しめるアイテムが多いです。その為、お客様が自身のアイデンティティを試せると思います。
北澤武志(Takeshi Kitazawa)
1982年生まれ
佐藤絵美子(Emiko Sato)
1981年生まれ
2006年 セレクトショップ「CANDY」を立ち上げ、オープニングディレクター兼バイヤーを経て独立
2009年 DRESSEDUNDRESSEDを設立
2012年 Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOにてコレクションデビュー
Text: Naoco Okada