YUMI KATSURA(ユミカツラ)は桂由美がデザインするウィメンズブランド。パリ・オートクチュールコレクションライン「YUZEN」を引用し、日本美術と西洋美術を融合するプレタポルテラインを今期初めて発表した。パリの第4区区役所で発表されたオートクチュールコレクションでは葛飾北斎や歌川広重、グスタフ・クリムト、アルフォンソ・ミュシャを取り上げた。
2018A/W コレクション特別インタビュー
日本を代表するウェディングドレスブランド「ユミカツラ(YUMI KATSURA)」を一代で築き上げた桂由美氏が、世界に日本の美を届けるために パリ・オートクチュールコレクションで発表し続ける"YUZEN"ライン。クリエイティブディレクターを務めるのは「ドレスキャンプ(DRESSCAMP)」を立ち上げ、 同じく一線で活躍を続ける岩谷俊和氏。今回は、それぞれのクリエーションにかける思いや、次回のコレクションについて二人の貴重な話が聞けた。
─── まずYUMI KATSURAのこれまでのヒストリーを、簡単にお伺いできますか
桂由美氏(以下桂):52年前にブライダルファッションの先駆けとしてYUMI KATSURAを創業しました。全てをお話しすると長くなりすぎてしまいますが、 一貫したコンセプトとして、日本のファッションが下品なものにならないよう、品格、信頼、ロマンを大切にこれまで運営してきました。 ブライダルを中心にロマンティックな夢のある洋服を作りたいというのは創業当初から思いです。海外での展開については1981年にアメリカでの販売を開始し、 その後パリに進出しました。パリコレに参加し始めたのは2001年からです。その際にパリに店を開いたのですが、パリの店舗はブライダル専門ではなく、 オートクチュールのアイテムも取り扱いたいと考え、始めたのが、この和をモチーフにしたYUZENライン、現在パリ・オートクチュールの期間に年2回発表しています。
─── どうして「友禅」をテーマにされようと思ったのですか
桂:パリという世界中のブランドが集中している場で一番大事なことは独創性。誰もやってないことをやるっていう事を考えた時に、 私は日本のデザイナーとして、日本にいないとできない事は何かを考え、たどり着いた答えでした。初めは和紙を題材にして、紙でドレスを作り、 「和紙モード(WASHI-MODE)」という名前でパリの方にも認知してもらっていたのですが、やはり紙ですから実際に販売して、着てもらうというのは難しかった。 そんな時「友禅」に可能性を見出しました。染めや刺繍によって華やかな色彩を表現する友禅は海外にも必ず通用すると。だんだん日本人が着物を着なくなり、 友禅の素晴らしい技術が廃れていく中で、この魅力を世界に広めていくことには意味があると思いました。単に着物を作るのではなく、 我々のやってきたドレスメーキングの経験を生かし、現代のファッションに友禅を活かしたものを作りたいと思いました。
─── そこから岩谷さんとのコラボレーションが始まったのですね
桂:友禅を中心にアイテムを製作することを決めた後、岩谷さんに相談しました。というのは岩谷さんのことは以前から存じていて、 友禅に不可欠である柄の扱いが群を抜いてると思っていたので。それからスタートして、4年。次回の2018年1月が8シーズン目になります。
岩谷俊和氏(以下岩谷): 僕も別のブランドでウエディングドレスをやっていて、それを扱うメーカーが共通していて、という接点がありました。
─── 岩谷さんのご経歴を改めて簡単にお伺いできますでしょうか
岩谷:僕はデザインを始めて、ちょうど15年目になるのですが、15年前にDRESSCAMPというブランドを始めて、それから、創作活動をしています。 DRESSCAMPを始めるまでは、テキスタイルのプリントのデザインをしていました。
桂:尾形光琳をはじめとする琳派の人びとをはじめ、去年の伊藤若冲であったり、7月の時の鈴木基一と俵屋宋達を取り上げましたが、 そういった作家たちの作品の中で、どの図柄にインパクトを感じるか、魅力に感じるかというところで、 岩谷さんの選ぶ図柄と私が思う図柄が同じであることが多いですね。感性が似ているというか。
─── 4年間続けられてきて、作品作りはどう進化していますか
岩谷:個人的には、もともと日本のものに対しての知識がすごくあるというわけではなかったので、プリントとしての日本っていうのはこれまでも取り上げたことがあり、 知識はありましたけれども、友禅や刺繍、西陣織など日本の伝統技術や、日本の絵師の知識というのは、毎回のコレクションを経て糧になっています。 それが作品作りにも繋がり広がりが出てきていると思います。
桂:オートクチュールのショーだから、本当のこと言うと、全部手描きで、手織りで、刺繍でいきたいところですが、一方で日本の美を伝えていくために、 皆さんに着て頂きたい。いくら良いものを作っても、ただ綺麗ですねと見るだけじゃなくて、着てもらうことも考え、(今回 WEBで販売するような) 少量ですが量産しているものと、高価ですが本当にこだわった一点ものと、バランスをとっていますね。
─── メンズも手がけられていますね。すごく素敵だと思いました
桂:最初はレディースだけだったのですが、去年パリでショーを見ていた、モデルの男の子が、僕も着たいと言って、メンズやってくれないんですか、 って言われて。はっとして、それがヒントになりメンズも加えました。
─── 次回1月のコレクションについて教えてください
桂:満を持して、「葛飾北斎」を取り上げます。この4年の取り組みの一つの集大成のような位置づけですね。 毎年パリと並んで行なっている国内でのコレクション発表もこれまでにない特別なものを用意しています。
岩谷:今回新しい試みなのは、今まで、日本の絵師のみにフォーカスしていたんですけれど、今回は葛飾北斎と、 北斎が影響を与えたヨーロッパの画家、両方を同時にモチーフとして使用し、和と洋がミックスされています。 技術として一番の注目は、手書き友禅ですね。やっぱり手書きならではの友禅のすばらしさ、というものを伝えたいと思い、 今回は特に大きく取り上げました。また同時に西陣織などの技法も使用しています。日本の図柄だけでなく、 逆に今回モネに代表されるヨーロッパの画家を西陣織で織り上げるという試みもしているので、その辺りも注目してほしいですね。
─── 最後に今後のブランド展開についての思いを教えてください
岩谷:こういう日本のブランドで、ちゃんと日本のものを取り上げているブランド、ドレスがここにある、ということを定着させたいですね。 そのためには続けていくことがやっぱり重要だと思います。
桂:例えば、小池百合子さんが、去年のリオパラリンピックの閉会式で黄緑色の鶴のケープを着て旗を振っていただいたのですが、 日本の方が世界の場に出て行かれる際に、洋服で後押しができるというのはとても嬉しいですね。そういった海外での公の場やパーティーで、 日本人の方が着てくれる機会が増えるといいなと思っています。また、世界的にどちらかというと露出の多いような服が増える中で、 品位や格調をあらためて大事にして、世界中に届けていきたいな、と思っています。
桂 由美(Yumi Katsura)
ブライダルファッションブランドYUMI KATSURAを手がけるデザイナー。
共立女子大学卒業後、フランスへ留学。日本初のブライダルファッションデザイナーとして1964年より活動開始、
日本のブライダルファッション界の第一人者であり、草分け的存在。
世界30ヶ所以上の都市でショーを行い、ブライダルイベントを通じて
ウエディングに対する夢を与え続けることから「ブライダルの伝道師」とも言われている。
岩谷 俊和(Toshikazu Iwaya)
神奈川県横浜市生まれ。文化服装学院アパレルデザイン科メンズコース卒業。
2002年 「DRESSCAMP」スタートさせる。第22回毎日ファッション大賞
新人賞、資生堂奨励賞第6回モエ・エ・シャンドン新人デザイナー賞受賞。
2012年「YUMI KATSURA」クリエイティブディレクターに就任